2015年2月15日日曜日

2014年 冒険の書 その6(北陸) #1

 とっておきの海と山を見に、ちょっと北陸(そこ)まで。

【1日目】8/2(土) 0900起床。
 最初は午後から実家に帰ろうと思ったが、ちょうど地元の花火大会と重なって、電車もバスも滅茶苦茶に混むことに気がついたので、代わりに軽く旅することにした。

 旅をするからには、乗ったことのない路線に乗りにいきたいが、あいにくJRでは未乗路線が八戸線と大船渡線気仙沼~盛、南武線大川支線しかなく、私鉄を見ても三陸鉄道南・北リアスの各線、箱根の伊豆箱根鉄道十国ケーブル線、黒部立山アルペンルートの一群、高岡の路面電車である万葉線、それから富山地方鉄道の本線、あとは黒部峡谷鉄道しか残っていない。

 八戸線と大船渡線はこの盆休みに乗る予定だし、大川支線は完乗あてんど用の約束の場所として取っておかねばならないので、JRは選択肢としてありえない。
 私鉄も、三陸鉄道は今度の盆休みで踏破予定のため除外。かといって十国ケーブル線は、近いのはよいが、いかんせん関東地方で近すぎるがゆえにあまりそそられない。黒部立山アルペンルートは通過するのが1日がかりで、家を朝早く出ないと間に合わないため今日はもうNG。万葉線は高岡駅が100m移転したためにできた、いわゆる「追加実績」なのでイマイチ高まらない。もっと言えば、わざわざ100mのために往復700kmも移動するのは、いくら僕でもさすがにばかばかしいので、アルペンルート完乗のついでに乗るぐらいでいいかなと思っていた。

 というわけで、今回のターゲットは、富山地方鉄道本線と黒部峡谷鉄道に絞られたわけだが、単にそれらを乗るだけでは能がないので、僕の旅としては珍しく、途中下車を組み込むことにした。いつもはながとろハウスから東北線の土呂まで歩くが、今日は外があんまりにも暑いんで、ながとろハウスの最寄りバス停から東武バスで高崎線の宮原駅へ。
 宮原駅で富山までの乗車券と、長野新幹線あさま527号の指定券を買い求める。



 大宮からすでに我慢できなくて酒を呑み始める屑。
 長野駅で信越本線の直江津行きに乗り換え。この長野から直江津の間も、並行在来線ということで、北陸新幹線ができたら信越本線ではなくなってしまうので、今のうちに愛でておく。


 個人的には、並行在来線の分離というのは致し方ないと思う。政治的な問題なので、僕のような仔鹿てつおたがとやかく言うことではないし、地元がその条件に合意しているのであれば、あえて口を差し挟むことでもない。
 ただ、並行在来線の名前だけはもう少しまともにできなかったのかと思うところはある。信越本線や北陸本線は、JRから分離後、「えちごトキメキ鉄道日本海ひすいライン/妙高はねうまライン」とか「あいの風とやま鉄道」という新しい名前に改名されるが、個人的にはこれらの名前にトキメキも愛も感じられない。乗りたいと思わせる何かが1ミリも感じられないし、それどころか客をばかにしてるのではとすら思ってしまう。いくらなんでもキラキラネームすぎる。脳が溶けてる奴が思いつきで名付けたようにしか思えない。

 てつおたがいうところの「旅情」というものは、おのおのの路線が持つ雰囲気、風景、歴史、車両がいろいろとない交ぜにされて初めて成立する。車両だけは世代交代していくので徐々に変わってゆくが、雰囲気と風景と歴史はおいそれとは変わらないし、その積み重ねにてつおたは強く惹かれるのである。今回の並行在来線の名前は、その大事な3つをぶち壊すには十分すぎるキラキラネームである。変な名前のせいで、せっかくの旅情のすべてが毀されてしまった路線に乗りたいなどと、誰が思うだろうか。

 愚痴はこれぐらいにしておく。
 僕を乗せた列車は、二本木のスイッチバックなどを過ぎつつ、直江津に着弾。新潟カラーと長野カラーの電車が並ぶ光景が見られるのももあともう少し。 湘南色もやってきた。



 直江津で1757時発の北陸本線富山行き568Mに乗り換え。
 オレンジ色の座席は北陸ならでは。


 直江津から2つ目の有間川駅に降り立つ。統計では1日の利用者数は34人。駅前には民家が数軒と国道、そして漁港があるだけの小さな駅だ。



 僕は昔からずっと不思議でしょうがないのが、何でこの駅が青春18きっぷのポスターの絵に選ばれないのだろうか、ということだ。駅の待合室からこんな風景が観えるというのに。


 時間は1806時。僕は今日、海と夕焼けを見るために、1918時の列車までこの駅で過ごすことにしていた。駅を出て、漁港の突堤で夕焼けを見る。最初は黄金色だった西の空が、だんだんと紅色に染まってゆく。きれいすぎるだろ…。







 折り悪く小雨が降ってきたので、とりあえず誰もいない駅に戻り、夕焼けを見ながら百恵ちゃんの「いい日旅立ち」を聞いていたら涙が出てきた。大仰な、と思われるかもしれないが、嘘ではない。涙が自然と出た。


 まあ、僕にもいろいろあるのだ。
 僕がぽろぽろと涙を流していると、日が暮れはじめて薄暗かった構内が、不意に明るくなった。ホームの電灯が点いたのだった。時間や暗さに応じて自動で点くのか、あるいは僕が駅にいるのを監視カメラ越しに誰かが見ていて電灯を付けてくれたのかは分からないが、泣いている僕をハッとさせるまばゆい蛍光灯の明滅に、僕は現実に戻って涙を拭った。

 駅の自動放送は、僕が乗る予定の1918時発金沢行き572Mが、定刻より4分ほど遅れそうだと言っている。この4分の間にも、空の色が刻一刻と変わってゆく。その空を下りホームから眺めながら、北陸本線が日本海ひすいラインとかいうヘンテコな名前になっても、ここにだけは何度でも来ないとと思いを新たにした。さっきの愚痴とは矛盾するが、まあこまけえことはいいんだよ。美しい風景を前にしたら、どんなまどろっこしいおべんちゃらも無力である。



 有間川から普通電車に揺られて約2時間で富山に到着。
 ホテルに投宿したあと、街に繰り出したら立呑み屋があったので迷わず入店。富山に来たからには僕の大好きな銀嶺立山を呑らざるを得ないので、速攻オーダー。大将にお勧めの肴を聞きつつ立山を愉しむ。





 富山に立ち呑み屋があるとは思いもしなかった。お値段は少々高いが、それは僕が帝都の屑街を基準にしているだけであって、富山の相場では普通だろう。

 好きな電車に乗って、きれいな風景を見て、うまい酒を呑んでご満悦の僕だった。
 たのしい富山1日目、おわり。

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