2020年8月27日木曜日

旅する無職 0日目 ~序文~

 旅は、日常との対比であるからおもしろいのだと思う。
 我が国には、古くからケとハレという概念もあるし、旅の恥は掻き捨てという言葉もある。鬱屈とした日常の刻苦を旅で晴らす。知らない土地を訪ねて、自分の置かれた日常と比較してみて新たな知見を得る。だからこそ旅はおもしろいし、何度出かけても飽きることがない。

2020年8月1日土曜日

はやく妖怪になりたい(2020年2月 境線)

 木次線を乗り終えた僕は、松江で一畑電車に寄り道をして、出雲市から山陰本線のディーゼル鈍行で米子駅にやってきた。
 列車から降りた僕を、「4番のりば」と書かれた古めかしいアンドン看板が迎えてくれる。時刻は18時。日の落ちかけた米子駅のホームは、思ったよりも寒い。

2020年5月6日水曜日

僕と列車が落ち合うとき(2020年2月 木次線)

 2020年2月23日、日曜日。スマートフォンのアラームで5時20分に目を覚ます。
 ホテルの部屋から窓の外を見る。三次の空はまだ暗く、灰色の雲が垂れこめているが、雲の密度は薄い。どうやら雨は降らなそうである。
 今日は木次(きすき)線に乗ろうと思う。昨日の福塩線は20年も空いてしまったが、木次線は6年ぶりの訪問である。

2020年3月8日日曜日

あれから20年、これから20年(2020年2月 福塩線)

 2020年2月22日、土曜日。
 東京駅8時40分発、のぞみ159号で新神戸へ向かう。
 東京の雨は上がったが、浜松を過ぎるころから雲行きが怪しくなる。名古屋で傘をさす人を見かけ、乗り換えに降り立った新神戸は完全に雨の中であった。